NIPT(新型出生前診断)を調べた詳細をまとめた〜東京での経験も〜


〜これから受ける人へ〜

妻(はぴママ)がNIPTを受けました。
NIPTの性格上、気になる点、不明な点も多く、たくさん調べたりしたので、
NIPTについて調べている人に少しでも助力になればと思って、客観的な内容を中心に記録を残します。
倫理的なもの、感じたことなどの感想は最後に。

もくじ

1.  遺伝子・染色体異常の種類
1.1 高齢出産と染色体異常

2.  出生前診断(遺伝子検査)の種類
2.1 NIPT
2.1.1 陰性的中率
2.1.2 陽性的中率
2.2 クアトロテスト
2.3 羊水検査
2.4 超音波診断(初期NTなど)
2.5 まとめ

3.  愛育病院(東京)でのNIPT
3.1 出生前検査両親学級(遺伝学級)
3.2 遺伝カウンセリング
3.3 採血
3.4 診断結果を聞く
3.5 羊水検査

4.  補足
4.1 費用の総額
4.2 医療費控除
4.3 参考サイト




1.遺伝子・染色体異常の種類

はるか昔に学校で習ったことが、ここで活きてくるとは思ってもいませんでした。

まずは、遺伝子・染色体について簡単におさらいします。
人間の遺伝子は2本で1セット、46本23セットの染色体で出来ています。
DNAという言葉を聞く機会は多いですが、人間の設計図の情報が含まれています。
受精卵は染色体を23本が父親から、23本が母親からもらいます。

次に染色体異常についてです。
染色体異常とは、染色体セットのうち、いくつかの染色体セットで2本セットのはずが3本になっていることを指します。
これをトリソミーと言います。
(実際には1本であるモノソミー、モザイク等もありますが、ここでは可能性の一番高いトリソミーを扱います)

トリソミーの受精卵は人間の設計図の情報のエラーであり、多くの場合は生まれることができません。
もしくは、生まれても障害になることの無い染色体異常もあります。
この場合、子供が成人し、不妊治療中に発覚するなど、生活にはまったく支障が無い場合もあるそうです。
以下3つの場合は生まれることができるものです。

21トリソミー(いわゆるダウン症候群)
 生まれてからも長く生きることができる。

18トリソミー(エドワーズ症候群)
 生まれてから長く生きることが難しい。

13トリソミー(パトウ症候群)
 生まれてから長く生きることが難しい。

※可能性の高い順

出生前診断で検査の対象になる染色体は、この3種類です。

ポイントは
  • 生まれることができる染色体異常が検査の対象
です。

1.1 高齢出産と染色体異常

染色体異常は、誰にでも確率で発生します。
また、近親者に染色体異常のある人がいる場合は確率が上がるとも言われています。
一番可能性として高いのが高齢出産による確率の増加です。
この場合は卵子が原因と言われています(精子が原因の場合もあります)

NIPTについて調べていたら、よく目にした表です。

表 母体年齢と生まれることのできる各トリソミーの確率
母体年齢
(出産時)
ダウン
症候群
18トリソミー
13トリソミー
20
1/1441
1/10000
1/14300
25
1/1383
1/8300
1/12500
30
1/959
1/7200
1/11100
35
1/338
1/3600
1/5300
36
1/259
1/2700
1/4000
37
1/201
1/2000
1/3100
38
1/162
1/1500
1/2400
39
1/113
1/1000
1/1800
40
1/84
1/740
1/1400
41
1/69
1/530
1/1200
42
1/52
1/400
1/970
43
1/37
1/310
1/840
44
1/38
1/250
1/750
45
1/30
(Gardner RJM. Chromosome Abnormalities and Genetic Counseling 4th Edition, New York, Oxford University Press 2011)

これをダウン症に注目してグラフ化してみました。(Google Spreadsheetsって便利!)

※43歳、44歳で逆転があるが、サンプル数の少なさに起因しているとのこと
このグラフから35歳以上から確率が急激に上がっていることが分かります。
これが35歳以上でNIPTを受けることが出来る理由です。

2.出生前診断(遺伝子検査)の種類

2.1 NIPT

NIPTとは

無侵襲的出生前遺伝学的検査 
(英語: non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)

のことです。
簡単に言うと母体血から赤ちゃんの遺伝子の異常を調べる事ができます
健康診断でするような採血をすることで、赤ちゃんに遺伝子の異常があるか高精度(後述)で調べることができ、採血のみと簡単で危険が無いことから注目されています。

また、10週〜22週と幅広い期間で検査を受けることが出来ます。
※後述しますが、陽性となった場合、確定診断羊水検査を受ける必要があります。
 検査を受ける場合は早めの行動が必要です。

アメリカで2011年に開発され、日本では2013年4月から臨床研究が始まりました。

原理は、母体血中から赤ちゃん由来の染色体を探しその染色体を調べるというものです。血中のDNAの中から母親由来のDNAを引くことで、残ったものが赤ちゃん由来のDNAということになります。

血中の赤ちゃん由来のDNAは完全なものではなく、診断の正確性は100%ではありません。

2.1.1 陰性的中率

NIPTの陰性的中率は99.9%と言われています。この数字がNIPTのすごいと言われている理由のひとつです。
日本の臨床研究では、99.99%前後になりそうです。(愛育病院での説明より)
このレベルになると、1万人で1人の疑陰性(誤判定)という結果です。

・出産年齢との関係
前述しましたが、染色体異常と出産年齢には相関があります。
30歳の染色体異常確率は0.1%なので、検査を受けなくても99.9%は染色体異常ではありません。
35歳の染色体異常確率は0.3%なので、若干検査結果の価値が出てきます。
NIPTの結果の信頼性と比較して、35歳以上が対象になるわけです。

2.1.2 陽性的中率

NIPTの欠点は陽性的中率が陰性的中率に比べてとても低いという点です。
陽性的中率は母親の年齢によって変わります。
特に、高齢になるほど陽性的中率が上がりますが、35歳〜40歳の間で数十%の開きがあります。
偽陽性(実際には陰性)である確率は10%以上もあることが多く、確定診断が必要になります。
陽性と診断された場合、確定診断の羊水検査を受けることになります。

また、1%程度の確率で判定保留(はっきりしない・分からない・再検査)ということもあります。

ポイント
  • 35歳以上の高齢出産でないと、確率的にNIPTの結果に信頼性が無くなる
  • 陰性的中率が非常に高い
  • 陽性的中率は陰性的中率に比べて数桁レベルで確率が低くなる

2.2 クアトロテスト

母体血清マーカー検査(クアトロ検査,トリプルマーカー検査)とも呼ばれます。
母体血を使用することから、NIPTと同じ利点がありますが、
偽陽性・偽陰性率が高いという欠点があります。

結果は確率(トリソミーである確率は◯%という意味)で出ます。

判定原理に母体年齢を一部採用しているため、高齢になるほど陽性可能性が上がります。
すなわち、高齢の場合は陽性の確率が検査をする前から高く、検査の意味が低くなります。
費用はNIPTより大幅に安いのですが、結果をどう判断するか?をどうするか決める必要があります。

2.3 羊水検査

確定診断です。
最初に羊水検査を受ければ全て済む話ではあるのですが、最大の欠点があります。
侵襲検査であり、羊水に針を入れます。
流産する可能性が0.3%あると言われています。

NIPTで陽性と出た場合は、確定診断のために羊水検査をします。
注意点として、15週以降でないと受けられません。

2.4 超音波診断(初期NTなど)

産婦人科検診で行っているエコーで行う診断のことです。
赤ちゃんの首の膨らみを医師が見て判定をします。
これも確定ではありません。
ここで所見があった場合にNIPTに移行することも考えられます。
12週前後のみと限られた期間である点も注意です。

2.5 出生前診断(遺伝子検査)の種類のまとめ

※出典 NIPTコンソーシアム

超音波マーカー検査
(NTなど)
クアトロ検査母体血中胎児 染色体検査
(NIPT)
絨毛検査羊水検査
非確定的検査/
確定検査
非確定的検査確定検査
実施時期11-13週15-18週10-22週11-15週15週以降
対象疾患ダウン症候群
18/13トリソミー
ダウン症候群
18トリソミー
開放性二分脊椎
ダウン症候群
18/13トリソミー
染色体疾患全般
(感度99.1%)
染色体疾患全般
(感度99.7%)
感度(ダウン症侯群に対して)80-85%80-85%99.1%99.9%99.9%
検査の安全性非侵襲的非侵襲的非侵襲的
採血のみ
流産率約1%
腹部に穿刺
流産率約0.3%
腹部に穿刺
特徴
ダウン症候群の80%以上を検出
偽陰性が少ない (0.1%以下)
妊娠10週から可能
確定診断
早期からの
診断可能
妊娠15週
以降に施行
限界
偽陽性率が高い(5%程度)
羊水検査でわかる染色体疾患の
2/3程度の異常しか検出できない
胎盤性モザイクの検出
侵襲性(腹部に穿刺)
流産・破水・出血・母体損傷などの
副作用リスク
胎盤性モザイクの検出
検査費用
(施設で異なる)
10,000円
~20,000円
20,000円
~30,000円
210,000円程度100,000円 ~200,000円

3.愛育病院(東京)でのNIPT

愛育病院での最初の検診 (妻の妊娠週11w5d)
私達夫婦は色々とあった末に愛育病院での出産を決めました。
最初の愛育病院での産婦人科検診の時点で11週5日。
ここで、高齢出産(妻は出産時37歳)のリスクである染色体異常の確率を提示されました。
遺伝学級開催の説明を受け、電話で申込みをしました。

3.1 出生前検査両親学級(遺伝学級)

遺伝学級 (妻の妊娠週12w1d)

遺伝カウンセラーと医師による説明があります。
前述の染色体異常の詳細な説明など、私の場合は学術的にも参考になりました。

遺伝学級は予約制で、土曜日に開催されます。
基本的には夫婦で参加します。
事前に予約が必要です。
開催は愛育クリニック(広尾)となります。
※以降、NIPT関連は全て愛育クリニック(広尾)でやります。

費用は夫婦で5000円です。

3.2 遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリング(妻の妊娠週13w5d)
遺伝学級終了後に、NIPTを希望する人は、遺伝カウンセリングの予約をします。
予約がちょっと先になってしまったのが残念でした。(希望者が多いようです)
こちらも夫婦で参加します。平日です。

カウンセリングの内容は
夫と妻それぞれの家族構成、遺伝的疾患の有無
ダウン症に対しての考え方
(NIPTで陽性となった後の羊水検査で)陽性と判定が出た場合にどうするか?
等を聞かれました。
そして、最後にNIPTを実施するかどうかの希望を聞かれました。

費用は5000円です。

3.3 採血

遺伝カウンセリングの直後に実施します。
採血するだけです。

費用は20万円です。

3.4 診断結果を聞く

採血後2週間程度かかります。
そして、予約が必要です。
夫婦での出席を求められます。
11w5d でNIPTに向けて動き出した私達夫婦が結果を聞いたのは 16w2d でした。
陽性だった場合は、次は羊水検査になります。

3.5 羊水検査

NIPTで陽性と判断された場合は、羊水検査をします。
羊水検査の注意点は、15週以降でないとできない点です。
また、結果が出るのに2〜3週かかるようです。
その結果をもって、どうするか判断する必要があります。

愛育病院の場合、NIPTが陽性だった場合の羊水検査に費用はかかりません。

また、遺伝学級では、愛育病院では人工妊娠中絶手術を実施していない旨の説明がありました。
ただし、カウンセラーの方が相談して欲しいという意味合いの事も言っていました。

4.補足

4.1 費用の総額

遺伝学級:5000円
遺伝カウンセリング:5000円
NIPT:20万円

合計21万円でした。

4.2 医療費控除

ここでかかった費用は残念ながら医療費控除の対象となりません。
人間ドック等と同様に検査の費用が対象にならないからです。

国税庁のサイト
母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用

4.3 参考サイト

  • 愛育病院 周産期遺伝外来
http://aiiku.net/clinic/departments/obstetrics_and_gynecology/idensodan.php
  • NIPTコンソーシアム
http://www.nipt.jp/

  • 染色体異常

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%93%E8%89%B2%E4%BD%93%E7%95%B0%E5%B8%B8

  • 母体血清マーカー検査

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%8D%E4%BD%93%E8%A1%80%E6%B8%85%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E6%A4%9C%E6%9F%BB


さいごに

私達夫婦は出生前診断について無知でした。
産婦人科検診で医師からはぴママの37歳での出産時のリスク(確率の数字)を提示され、
遺伝学級に行ってみようと考えました。
倫理的に生命の選択に繋がるから良くないという意見があるのも知っていますし、逆の意見もあります。
このあたりは、調べても答えが見つからないことが分かっていたけれども検索を繰り返しました。
その穴埋めではないけれども、NIPTについても十分に調べました。

また、遺伝学級を予約してから、検査結果を聞くまでの1ヶ月以上の期間、いろいろなブログを見たり、NIPTコンソーシアムのサイトを見たりしていました。
それでも心理的な満足は得られません。
丁度その時期に長期の海外出張が入りました。
結果を聞く直前まで妻を一人にさせてしまいました。
この時期の不安な気持ちは妻は何も言いませんでしたが、私以上のものがあったと思います。

これまで、産婦人科検診には全て付きそうことが出来ていますが、どこかNIPT前と後では気持ちが変わったように思います。

現在の日本のNIPTは臨床研究段階で、費用も正直高いのが実情です。
しかし、受診している愛育病院では検査を受けている人は多いと感じます。
(遺伝学級の参加者が多かったため・愛育病院は高齢妊婦が多いのも影響しているとは思いますが)

また、欧米では検査を受ける率が高いとも聞いています。

妊婦は平等であり、社会全体で考える問題だと思います。
ただし、出生前診断をするかしないかは、夫婦で決めるべきだと思います。

私の願いとしては、費用の全額助成を願うばかりです。(これは産婦人科検診も同じですが)

愛育病院での出産については下記記事で綴っています

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ついに、妻が娘を出産しました!無痛分娩希望だったのに、麻酔が出来なかった出産の一部始終をパパ視点で綴ります。
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出産する病院の御三家とも言われる東京田町の愛育病院で実際に妊娠・出産を経験しました。その際にかかった費用を、必須分、追加分にわけて明細を紹介します。



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